わたしが鳴こうホトトギス - 戸川純

雅たる春は

あな曙（あけぼの）

テッペンカケタカ

テッペンカケタカ

千代に時を経て

あゝ等身大に

かっこう

かっこう

ほうほけきょ

抜けば 玉散る

氷の声で

わたしが鳴こうホトトギス

門前に

習わぬ歌を かっこう

窓を濡らし

天が泣く

我 雨乞いの儀を歌う

すわ鳴くを

待たれたし

かっこう

かっこう

かっこう

かっこう

ちゅんちゅん ぴよぴよ

びいひょろろ

雉の鳴いても撃たれてまい

ちゅんちゅん ぴよぴよ

びいひょろろ

静かな森で

揺れる樹（いつき）の群れ

高く息吹は舞う

雅たる春を

目の当たりに

絶景なるかな

絶景なるかな

あゝ そうか

思い出したのは

子供のころ

小さき目(まなこ)に

値万金 万万金

梅に鶯 桃李は実る

いしの想ひか紅楼夢

東風(こち)ふかば

匂い(におい)は渡る

雅たる春は

あな曙

かっこう

かっこう

かっこう

かっこう

テッペンカケタカ

テッペンカケタカ

テッペンカケタカ

何年経っても鳴いてよ おわり

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